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萬的中華 笑龍(ばんてきちゅうか しょうろん)アイコン
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埼玉県吉川市 専門ジャンル:中国/四川料理

白碗竹快楼 (バイワンジュウクワイロウ)赤坂店などを経て24歳で四川亭 八重洲店で料理長を務める。
赤坂 四川雅園(しせんがえん) 立ち上げを経験し、再び四川亭 人形町店で料理長に。
際コーポレーションの店舗にてホールで接客を学び、数店の立ち上げに参加、2014年、30歳で独立。「萬的中華 笑龍」店主。
※2017年7月時点です。

料理にかける情熱、四川料理やスパイスの魅力。

店名の由来

「萬的中華(ばんてきちゅうか)」は、「俺のフレンチ」みたいになっちゃいますが、自分の名前が万里なので「万里の作る中華」という意味で。龍はずっと前から付けようと決めてました。
それと、お客様のことを考えた時に、自分の料理を食べて笑顔になってもらいたい。
それで「笑龍(しょうろん)」になりました。だからうちで出している小龍包は店名にちなんで「笑龍包」なんです。

料理人を目指したきっかけと四川料理の魅力

料理がしたかったわけではなかったです。高校生の時におしゃれなイタリアンがあって、そこでアルバイトしたくて。自分の作ったものをお客様が喜んでくれたことがうれしくて、料理人になろうと決めました。
調理師学校でフレンチやイタリアン、いろんなジャンルを経験して、いちばん中華が面白かった。その場で一食ずつ素早くお玉で調味料を拾い、鍋の中で合わせて味を作っていくのが大胆で毎回緊張感があるなって。そうかと思えば、点心のように緻密に計算されていて皮の包み方一つで味が変わってしまうものもあるし、多彩で奥が深い。
その中で自分が最もはまったのが四川料理。
特に小岩の四川家庭料理「珍々(ゼンゼン)」の味にどっぷりはまった。『孤独のグルメ』にも登場する人気店です。重慶出身のママの作る料理は、現地の味そのままで、辛さのレベル、シンプルさ、それが突き抜けていて直球勝負の料理がいっぱいあって。
それが衝撃的で、自分も専門職の強い料理が作りたいと思いました。
足しげく通ってママに働かせてほしいと直談判したら、「お店が小さくて無理だから拡張したら一緒にやろう」と言われ、一緒に不動産屋巡りして物件探しまでしました。結局それは叶わなかったんですけどね。
その代わり、お店が終わってから教えてもらったり、自分が作ったものを持参して味を見てもらったりしていました。

独立にこだわった理由

20代前半のころから30歳くらいまでに自分の店を持つと決めていたんです。そのためには人一倍の修業と経験が必要だとわかっていたから、全然苦じゃなかったですね。
それ以外にも、点心は上海のホテルで点心場を任されていた専門の点心師に教わりました。
独立にこだわったのは、納得のいくものをお客様に提供するには、自分の店じゃないとできないなって思ったんです。
ホテルの厨房で働いたこともあったけど、大きなところは当然仕事が分業で、お客様の顔が見えないし反応もダイレクトに伝わってこない。
分業で仕事をすると、この仕込みは誰かがやったからこういう仕上がりになったと言い訳が出てくるんです。人のせいにしたくない、良くも悪くも料理の責任はすべて自分にあるという方が潔い。自分の店ならそれが可能だと思ったから。

料理と食材へのこだわり

例えばラードは豚の背脂から作っているし、おこげも1週間かけて作ります。米炊いて7~8時間焼き込んで、5~6日は乾かして。湿度に左右されるから梅雨の時期なんかもっと時間かかります。
口で言うと簡単なようだけど、細かいコツがいっぱいあって、それは誰に聞いても教えてもらえなかった。失敗に失敗を繰り返してようやく自分の満足いく形になりました。
自分では高い食材を使わなくても持っている技で美味しくできるのが中華の面白さだと思っています。いい食材は塩で焼くだけでも美味しいですよね。
普通の食材を何倍にも引き上げることが自分の腕試しになるし、それを美味しいと感じてもらえるのが喜びなんです。
でも、猪豚やジビエ等の珍しい食材、あまり手に入らない食材で可能性を広げてみたいという気持ちはすごくありますよ。
仕入れは休みの日以外、毎日市場に行くことにしているんです。常連さんが多いのでその人が好きな定番は押さえつつ、変わったものとか季節感のあるものを両方出したいと思っているので。
毎日コミュニケーションを取っていると旬の野菜が入ったよとか、これ安いよって声掛けてもらえるし、食材から得るインスピレーションもあります。
最初は、市場のおばちゃんに高校生が買い物に来ていると思われて、店名で領収書を頼んだら驚かれちゃいました(笑)

一流の料理人に学ぶ

尊敬しているのはフランス料理「Le Mange-Tout(ル・マンジュ・トゥー)」の谷昇さん。
本を読んで何回か食べに行って、ワインと料理のマリアージュが互いを高めあうことを体験させてもらったし、話をさせてもらったら料理にかける情熱がすごい!
中華じゃなくて意外ですか?料理人として大切なのは気持ちで、ジャンルは関係ないと思ってます。心を込めて作っている、その情熱が伝わってきました。
それで、またここでも研修させてくれと直談判して(笑)
快くいつでも来いと言ってくださって1日だけですけど、厨房に入らせてもらいました。鳩の毛をむしる処理をさせてもらったんですが、他の人が3羽やる間に自分は1羽。一人でやっていては経験できないことをさせてもらいました。まだまだ知らないことがたくさんあります。
例えばジャガイモのゆで方一つでも谷シェフは丁寧で、それが中華のやり方と違っても美味しく仕上がるのであれば取り入れたい。
回り道、手間ばっかり増えるようだけど、それが美味しくなるのであればなるべく省かないでやっていこうと思います。
点心の先生もいまだに教えてくれるし、ついこの前もパティシエにカステラ生地の作り方を教えてもらったり、いろんな人に影響を受けて勉強させてもらっているので、美味しいものを作ることでお返ししていきたいと思っています。

独立したからこそ感じる悩みと喜び

一人で作っているので、一度に多くのお客様がいらっしゃると限界があります。料理をお待たせてしまうのが心苦しいので、予約の時間をずらして頂いたり。ただ、ありがたいことに今まで料理が遅いと文句を言われたことはないんです。カウンター越しに厨房がよく見えるから、唐辛子を煽っている時は辛みが空気中に拡散して、お客様がむせたりしているんですけど、そういう匂いや音や熱が伝わって、「今、何作ってるんだろう?」と想像して待っている時間も楽しみにしてくれているんじゃないかと、良いように解釈しているんですけど。ライブ感みたいなものが伝わっているかなと。勘違いだったら申し訳ないんですけど(笑)
あとはやっぱり時間が足りない!
丁寧な仕事がしたいし、試作を繰り返して研究もしていきたい。やりたい料理って増えていく一方なんです。全部紙に書き出してあって、一年に一度それを棚卸して、完成したものや興味がなくなったものは消していくんですけど、一度消しても何年か後にまたやりたくなったり、前はできなかったけど経験値を積んで、今やったら満足するものができたりすることもあります。人がやらないこともやってみたいし、古典中華も日本語版がない海外の調理科学本の解読も、やりたい事がありすぎるんです。
一日が24時間じゃなかったら、と思うこともあります(笑)
やりたい料理が無くなったら?そうなったら寂しいですよね。きっとそんな日は来ないんじゃないかな。
そうやって作った料理でお客様が笑顔になっているのを見られること、それを見た時にすべての苦労が報われる気持ちになります。
それが醍醐味だし、料理人でいる意味だと思うし。それに尽きます!

中華に欠かせない山椒やスパイスの魅力とは

山椒はしびれとさわやかな柑橘系の香りがありますよね。特にしびれについては山椒と同じ効果を得られるスパイスはないかな。香りだけなら陳皮、辛みなら唐辛子など他のスパイスで方向性は似せることはできるけど、あのしびれ感の代わりはない。
中華に限らず、スパイスの香りや味は重要です。人間の顔に例えると、目や鼻などのパーツが食材で、塩、砂糖、酢、しょうゆなどの調味料で輪郭を作って、スパイスで表情が決まる。初めて会った人の印象って、まず表情で決まりますよね。それと同じ役割を果たすのがスパイスなんじゃないかと。
もっと余裕ができたら薬膳指導員の資格を生かして、お客様の体調に合わせてそれに対応する食材や油、調味料、スパイスの使い方を調節して、美味しくて健康になれるような料理もやってみたいですね。そうなったら最高です。

自分らしく、そしてお客様のために

将来も今と変わらずお客様に喜ばれる店でいたい。ずっと通ってもらえる店にしたい。
投資や都内出店の話を頂くこともあって、例えば自分の料理の一部分を切り取った麺料理だけの店舗を人に任せてやるのとかは面白いと思うし、そんな話をもらえるのはありがたいです。
もっと冒険できる、若いうちに儲けて今みたいな店はその後に趣味でやれと言われたりもしますが、そもそもこんなところに店を出すのが冒険ですよね。
結局は「今、自分が何を求めるか」だと思います。
それじゃ趣味でやるくらいの歳になった時に、点心の出来が良くないからやり直して夜中二時過ぎまで仕込みして、朝七時に市場に行く生活が出来るのかって思うんです。
だから今、やりたいことを後悔しないで全力でやりたいと思います。
驕らず地に足を着けて、サポートしてくれる家族、仲間への感謝を忘れずに、そしてこんな辺鄙な場所にあるうちを目指してやって来てくれるお客様の為に、期待を裏切らないよう精進していきます。
今考えてるのは、その年の最終営業日に、日ごろお世話になっている常連のお客様をお呼びして、その時食べてほしい料理を全力で仕込んでコース仕立てにした、その日限りの料理を振る舞えたら面白いんじゃないかな、と思ってます。
それは近い将来、実現させたいですね!